教員・研究案内

植物分子遺伝学研究室

本橋 令子

研究内容

テーマ1:シロイヌナズナのタグラインを用いた葉緑体の研究
 光合成は、地球上のほとんどの生物が生きていく上で欠かすことのできない酸素を供給する重要な反応であり、その光合成を行っているのは葉緑体である。また、葉緑体はビタミンや植物ホルモンなどの物質生産の場でもある。このような重要な機能を持つ葉緑体は核とは独立した独自の転写、翻訳機構を持っているが、核の支配から完全に独立した細胞小器官ではない。
 シロイヌナズナの葉緑体のゲノム上には約80程度の遺伝子がコードされているが、葉緑体自体を構成するタンパク質の大部分は核ゲノムにコードされている。この約2,300の核コードの葉緑体タンパク質のうち、現在まで、藍藻や他の生物との相同性から機能が推察できる葉緑体タンパク質の機能解析は進んできたが、高等植物独自の機能と考えられる他の生物との相同性のない葉緑体タンパク質の機能解析は進んでいないのが現状である。このような核コードの葉緑体タンパク質遺伝子の破壊株を集め、光合成、光応答と物質生産など、幅広い葉緑体機能に関与する遺伝子の同定を行う。

この研究が寄与すること
 地球温暖化や急速な環境破壊などの生活基盤を揺るがす大きな問題を解決するためは、植物生産性の向上が重要である。植物生産性の向上には二酸化炭素固定能や貯蔵物質の集積能向上などの同化能力強化と病原抵抗性、塩・強光・乾燥・高温耐性などの環境耐性強化が重要である。 本研究によって、積極的に葉緑体機能に障害を有する変異体をスクリーニングすることで、機能未知であった核ゲノムにコードされた多くの光合成や葉緑体形成、物質生産に関与する遺伝子の機能が解明される。単離同定された葉緑体形成、光合成機能、物質生産に関与する遺伝子を過剰発現することにより、機能増強又は機能付与させた新規な高機能植物の作出が可能であると考えられる。そのため、過酷な環境でも生育可能な植物、二酸化炭素固定能が向上した植物が作出され、耕作面積が広がり、食糧供給不足の解決及び、地球温暖化の解決につながる。

テーマ2:トマト果実を用いたクロモプラス分化メカニズムの解明
 葉緑体を含むプラスチドは細胞にとって必要な機能に応じて数種類の形態に変化する。葉では葉緑体に、根ではアミロプラストに、果実ではクロモプラストへと形態を変化させる。
 急速に技術が発達してきているプロテオーム解析技術とトマトゲノミックリソースを利用することにより、トマト果実中に存在するクロモプラストに特異的なタンパク質を多数同定する。特に、果実の成熟過程における原色素体や葉緑体からクロモプラストへの分化に関与するタンパク質の網羅的解析を行ない、クロモプラスト分化の鍵タンパク質を同定し、分化制御を行うことを目的としている。

テーマ3:サトイモの育種基盤整備
 サトイモ(Taro.Colocasia esculenta)は、近年、熱帯アフリカ地域で、急速に生産が進み、農資源の重要な農作物の地位にある。その栽培地域は、熱帯から温帯にかけ広く、水田、畑地、山地などの栽培・生態環境に適し、特にイネの栽培が不可能な環太平洋諸島などでは欠くことのできない作物である。しかしながら、多様性に富む品種資源に関する異分野横断型の総合研究は皆無であり、育種基盤も整備されていない。
 我々は、次世代に必要なサトイモ資源を継承していくために①遺伝資源の保全(系統維持、茎頂超低温保存)、②遺伝資源としての品種特性などの分子遺伝学的解析や日本へのサトイモの渡来経路の解明、③疫病に対する耐病性基盤研究、また、高齢化社会の食生活、幼児期の食の安全に欠かせない問題と考え④栄養学、調理学的研究など詳細な基盤研究を行っている。

テーマ4:植物の遅延発光を用いた新規光合成評価方法
 作物の成長や品質に大きな影響を与える光合成の新しい評価技術確立に向け、様々なストレス環境条件におけるシロイヌナズナの遅延発光の計測やシロイヌナズナの2500の葉緑体タンパク質遺伝子破壊株の遅延発光を測定し、遅延発光によって検出可能な光合成経路の解明やストレスが与える光合成への影響について研究している。

ラボメンバー
教授 本橋令子:シロイヌナズナ及び、トマト果実を用いた、プラスチドの機能、分化のメカニズムの解析
技術職員 深沢知加子