教員・研究案内

食品栄養化学研究室 (西村)

西村 直道

 大腸はこれまで水分と一部のミネラルを吸収し、糞便を作るためだけに存在すると考えられてきました。しかし、この大腸にはヒトの体細胞数をはるかに超える多種多様な細菌が存在し、宿主と共生関係にあります。これらの細菌によってガス成分(水素(H2)やメタン)や短鎖脂肪酸が生成され、それらにより宿主に影響を与えています。この研究室では難消化性成分(特に糖質)の発酵産物が宿主に引き起こす応答と生活習慣病発症予防の関係について明らかにすることを目的にラットで研究を行っています。以下に概要を示します。

1.難消化性成分による大腸H2生成促進と腸内細菌叢
 H2は還元力を有し、生体内で酸化ストレスを軽減することが知られています。大腸では常在する腸内細菌による難消化性分の発酵で大腸H2が生成されます。この研究では、大腸H2生成の速度および量に対する発酵基質(難消化性成分)と腸内細菌叢の関係性についてin vitro嫌気バッチ培養とin vivo(ラット)で解析しています。

2.大腸H2による酸化ストレス軽減作用
 H2ガスの吸入同様、大腸H2に生体内へのH2デリバリーにより酸化ストレスを軽減し、酸化障害を抑制することを見出しました。また、単原子分子のHeを除いてH2分子は最小サイズの分子のため、大腸から血液だけでなく、拡散により腹腔組織に移行していることを見つけました。したがって、大腸H2が多くの組織でレドックスバランスを維持に寄与していると考え、各生体内組織における大腸H2の作用とその作用機構についてラットを用いて研究を進めています。


 図はペクチン(水溶性食物繊維の一種)を与え大腸H2を多量に発生したラットの肝臓に虚血-再灌流を施したとき(IR-Pec)の肝組織像です。虚血再灌流処置を施していないSham-Cと同様に中心静脈から放射状に類洞が観察されます。一方、虚血-再灌流処置を行った場合 (IR-C)、その類洞は観察されず、中心静脈付近に好中球が集積しています。これはPecを摂取することで発生した大腸H2が肝臓で酸化ストレスを軽減したためであることが下のグラフからわかります。

 また、大腸H2は腹腔内のあらゆる組織にデリバリーされています。下図のように難消化性オリゴ糖であるフラクトオリゴ糖を与えると大腸H2が多量に発生しますが、それが一部吸収され門脈に流入しているだけでなく、腹腔内組織に移行していることがわかります。肝臓を除く腹腔内組織には門脈血によるH2デリバリーはなく、大腸からH2が腹腔内に拡散していることがわかります。

トピックス

  • 現在ご覧いただける情報がございません。