教員・研究案内

動物生理学研究室(高坂)

高坂 哲也

 私たちの動物生理学グループは、生殖生理学を専門としている3名の教員(森誠、高坂哲也、与語 圭一郎)で構成されています。研究成果は、国内外の学会で発表し、大学院生を中心にこれまで数々の優秀発表賞を受賞しています。在学中の研究内容は、生殖科学やその関連分野で国際的に著名な学術雑誌に論文として掲載することを最終目標としています。「日本の生殖科学の発展」という観点から、Journal of Reproduction and Development(日本繁殖生物学会の国際誌)やAnimal Science Journal(日本畜産学会の国際誌)、Journal of Poultry Science(日本家禽学会の国際誌)などにも良質の論文を投稿することを奨励しています。

研究のスタンス
「食資源動物の受胎率が低下している」。これは日本に限った話ではありません。世界的規模で起こっている深刻な事態です。

これは、雌だけの問題ではなく、雄側にも起因している、と私達は考えています。例えば、一般精液性状検査で異常が認められないにも係わらず、受胎率の低い精液(低受胎性精液と私たちは呼んでいます)の事例が少なからず報告され始め、生産現場で大きな問題となりつつあるからです。このため、食資源動物の生産効率低下はもちろんのこと、系統保存の上でも憂慮する事態を迎えつつあり、早急かつ有効な対処法の確立が急務であると考えます。

私達の目標は、受胎率向上を雄畜(雄動物)側から実現し、この深刻な問題を克服することです。そのために、造精機能を司っている精巣、精子受精能、精子形成、環境要因などに焦点を当て、細胞学的‧生化学的‧分子生物学的手法を駆使し、ブタ、ヤギ(反芻家畜のパイロットアニマル)、マウス、ウズラを研究対象として、以下の先導的研究に取り組んでいます。

主な研究内容
リラキシン(Relaxin)は、分娩に備えた子宮の改変作用のほか、多岐に渡る組織でその多彩な機能を発現する多機能性ホルモンです。雄では、私たちや海外のグループにより、リラキシンは精子に結合し、精子の受精能を司る鍵分子として作用することがブタやヒトで明らかとなっています[新ホルモンハンドブック(日本比較内分泌学会編;南江堂)に書きましたのでご覧ください]。
一方、精子を生み出す精巣の機能、すなわち造精機能は、ホルモンを始めとする数多くの化学情報伝達分子の複雑なクロストークによって高度に制御されており、そのような制御が雄の受胎能力の維持に重要であります。最近、リラキシンにはrelaxin-like factor(RLF)と呼ばれる関連因子が存在し、精巣で特異的に発現していることが判明しました。私たちは、精巣で発現するリラキシン関連因子(RLF)に焦点を当て、その構造と機能解明に挑戦し、RLFが造精機能の制御を司る鍵分子の一つとなり得る証拠を見出そうと取り組んでいます。具体的には、構造面からは、ブタやヤギの精巣RLFタンパク質の単離・精製、MS/MSによる構造解析により、RLFの構造特性を明らかにしようとしています。一方、機能面からは、作用発現の要となる受容体分子LGR8が最近発見されたことより、その特異抗体を作製して、LGR8を発現している細胞を特定し、その発現特性を究明しようとしています。また、LGR8をコードしている遺伝子を培養細胞に導入し、RLFとの相互作用の解明を図る研究も行っています。このようなアプローチにより、精子形成過程におけるRLFの生理学的役割が明らかとなり、造精機能の制御を司る鍵分子としての位置付けが明白になるものと期待できます。また、本研究で得られた知見は、食資源動物の生産性低下の解決策に有益なパラダイムを与えるものと考えています。

 

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