教員・研究案内

広域生態学研究室

王 権、薗部 礼

本研究室では、湿地から乾燥地に至るまで様々な生態系を対象に、時・空間スケールでの炭素・水循環及びエネルギーバランスに焦点を当てた研究を実施しています。具体的には、野外観測及び室内実験、さらにはモデルの開発・シミュレーションを行い、これらとリモートセンシングデータを用いた炭素・水循環及びエネルギーバランスの評価方法の開発に着眼しています。キーワードとして、生理生態学、ハイパースペクトルリモートセンシング、放射伝達モデル及びガス交換モデルが挙げられます。

  1. ブナ林における生理生態学とガス交換

植物の周囲を取り巻く環境への機能的な応答、特に、光合成能力に関するパラメータ(Vcmax, Jmax, Rd…)及び蒸散を含む生理的なパラメータの季節変化を連続的に調査しています。季節変動を明らかにするために、定期的な野外観測及び自動観測システムを用いたデータ取得を行っています。また、季節変動における制御ファクターを特定するために、内的・外的要因を詳細に調査しています。例として、グラニエセンサによる樹液流の計測を通した立木の蒸散の観測、高頻度での形態的な特徴や光合成能力に関するパラメータの計測を行っています。

  1. ハイパースペクトルリモートセンシング及び放射伝達モデル

反射されたスペクトルに関与する生物物理学、生化学及び生理的なメカニズムを明らかにするために多くのリモートセンシングによる研究がなされています。分光反射特性は群葉における光の吸収特性との関連性が強いため、分光反射特性から生化学及び生物物理学的なパラメータを推定することができます。そこで、生化学パラメータ(e.g. Vcmax, gs…)との関連性がある指標を開発することに取り組んでいます。また、葉及びキャノピーでの放射伝達モデルは、様々なスケールにおける吸収、透過及び反射をシミュレーションするために用いることができます。このモデルを用いることによって、構造的なパラメータだけでなく、生化学、生物物理学的なパラメータの光への感度を明らかにすることができ、リモートセンシングデータと生態生理的なパラメータをリンクさせる基礎となりえます。

  1. リモートセンシングの応用

衛星リモートセンシングによって取得されるデータは大気及び地形的な影響を受けるため、解析を行う前にこれらの影響を軽減させなくてはなりません。起伏が激しい地形ではより大きな問題となります。放射伝達モデルを標高データと組み合わせて用いることは補正に有効であり、現地での観測結果を用いることによって検証を行うことができます。完璧に補正されたリモートセンシングデータは土地被覆図や変化抽出に利用でき、リモートセンシングデータから複雑な地形でのLAIを推定することを可能にする。

  1. 乾燥地における研究

様々な乾燥地における自然植生が関連した環境保全及び炭素固定に関する研究を行っています。主なサイトは中国およびタジキスタンを含む中央アジアに位置しています。生理学、モデリング、リモートセンシングを用いたアプローチで取り組んでいます。これらの研究により、乾燥地生態系における炭素・水循環の新たな観測技術の開発を行います。


苗場山のブナ林におけるタワーサイト(900m、X1)

樹冠スケールで分光反射特性測定
樹冠の分光反射特性の計測


中央アジアの典型的なランドスケープ.主要な植生はハロキシロン(Haloxylon ammodendron).

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