教員・研究案内

生命環境倫理学研究室

竹之内 裕文

「生命環境倫理学」とは?
わたしたちの研究室では、生命(いのち)と環境の不可分な関係(つながり)に注目しながら、身近な課題を題材に、各人の問い(驚きや疑問)を掘り下げています。
研究活動の中心は文献研究におかれることになりますが、自然とのかかわりの中で生きる人びとの生活と文化に出会い、生身の現実から出発するという目的のもと、フィールドワークにも力を入れています。研究室メンバーは、それぞれのフィールドを見つけ、その現場で実践体験を積み、そこで得られた問いを研究室に持ち帰り、徹底的に問い抜きます。そのようにして理論的な鍛錬を積んだうえでふたたび現場に赴くというようにして、実践(活動)と理論(思考)との円環サイクルを踏破する(歩み抜く)わけです。
このように(自然・社会)環境とのかかわりの中で生きる人たちの生(生活と文化)により添い、生身の現実から出発しようと試みるかぎり、哲学、倫理学、社会学、経済学、農学、医学、看護学など、既成の学問区分やその枠組みを超えて、したがってまた理系/文系の区別にも囚われることなく、ラディカル(根本的)な思考を展開する必要があります。それこそ本来の意味での哲学・倫理学的な態度といってよいでしょう。
「哲学」とは、日常生活において素通りされる事柄に「驚嘆することthaumazein」から始まる「愛知philosophia」の営みです。その主眼は、けっして知識や情報の習得にではなく、自分の問いを見つけ、それにアプローチする眼差し、問い方を身につけることにあります。その意味で、「哲学」とは問うという行為・遂行そのものであって、いわゆる人生哲学(確たる信念)はその格闘の所産・財産でしかありません。
哲学の徹底した問いが「倫理」(ある共同体のうちで、身についたものの見かた・考え方)に向けられるとき、そこに「倫理学」が成立します。「倫理」という語は、漢字の語義にそくしていえば、「仲間・共同体に通用する道理」を意味します。近代ヨーロッパ語(たとえばethics)の場合も、その語源をたどれば、住み慣れた土地で身につけたものの見方・捉え方(ēthos)に行き着きます。これを踏まえれば、「非倫理的」な人、「倫理」を欠いた人などいないことになります。いわゆる倫理的な問題が生じるのは、倫理を欠いた人がいるからではなく、各人が属する共同体(地域、家庭、職場)の「倫理」が食い違うからです。
以上から明らかなように、「生命環境倫理学」とは、生(生命、生活、人生)とそれをとり巻く環境の相互形成作用(互いにつくり合う関係)に注目しながら、それに関するわたしたちの日常的な見かた・考え方を掘り下げて考えていく試みです。その探究を通して、哲学・倫理学の基礎研究だけでなく、医療・福祉現場における生と死の諸課題や、自然保護、農の営みなど、人間(生命)と環境(土地)の関わりをめぐる問題について、新たな見方・考え方を獲得することをめざしています。
既成の枠組み(常識)に流されず、一歩踏みとどまって深く考えたい人、自分の生き方を真摯に探究している人、そしてテキストからの語りかけを聴きとることができるようになりたい人は、駿河湾をのぞむ研究室にお越しください。スリランカ、中国、インドネシアからの留学生も多く在籍する、個性豊かな研究室メンバーたちと互いに切磋琢磨しましょう。

メンバー(院生・学部生)の研究テーマ(例)

  • 看護の現象学――M.ハイデガーとともに
  • 環境のなかで生きるということ――農村生活を通して見る環境
  • 農村の生活から見えてきたもの――人が生きるという観点から
  • 生の充足――土地に根ざした暮らしから見えてくるもの
  • 内モンゴル・オルドスにおける土地利用と所有権――砂漠化と砂嵐をめぐって
  • 量の豊かさから質の豊かさへ――E.F.シューマッハーとともに
  • 人間と環境の関係を問いなおす――持続可能な都市空間の構築へむけて
  • 魅力的なまちづくりから環境対策へ――生活環境の保全という観点から
  • コミュニティにおける個人のこころ

研究室生(院生・学生)への一問一答!

Q.現在の研究室に分属を希望した理由は何ですか?
・熱い先生。
・研究室の雰囲気やスタンスに魅力を感じた。
・実験系よりも、人と話して意見を交し合ったりすることのほうが向いていると思ったため。
・思想系に惹かれるものを感じていた。学部卒業後は就職を考えていたため。

Q.ゼミの様子を教えてください。
・厳しいです。言葉を厳密に解釈する力(自ら考える力)が求められます。
・疑問を疑問のままにしない、物事や自分の考えをはっきりさせるなど、ごまかさないことが大切だと感じられるゼミです。

Q.研究のやりがいは何ですか?
・素敵なフィールドとの出会い。
・ゼミでの指摘と発見が面白い。一人でも本を読み込んでの発見や気づきが面白い。

Q.研究室の雰囲気を教えてください。
・個性派ぞろい、グローバル、飲ミニケーション。
・自由。
・飲み会が多いです。普通なら関わる機会の少ないような方と話すことができ、とても勉強になります。

Q.企業との共同研究などは行っていますか?
・在宅ホスピスや総合病院など、病院・福祉施設との共同研究が中心です。
・農家や農的共同体の知恵も借りながら、研究を進めています。

Q.その他、アピールポイントはありますか?
・自由だからこそ、やりたいことのある人は有意義に時間と機会を活かせる研究室です。先生もパワーのある方で、いろんな土地、人に出会えるチャンスがいっぱいあります。
・良くも悪くも“自分次第”の研究室だと思います。自ら吸収しようとしたり、深く考えたり関わろうとしたりすれば、たくさんの機会やヒントを得ることができる環境だと思います。

白神山地のマタギ小屋で
白神山地のマタギ小屋で

梅ヶ島大代地区(安倍川上流)で
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読売新聞(2008年4月)の研究室紹介
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岡部村(宮城県仙台市)で
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韓国(ソウル郊外)のワイン工場で
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