教員・研究案内

食品栄養化学研究室 (森田、日野)

森田 達也・日野 真吾

 従来の研究から食物繊維には多彩な生理作用が知られていますが、これらの作用は同時に摂取した食物繊維と栄養素との消化管内における相互作用を反映した結果が主でした。一方で食物繊維自体と消化管に対する作用を研究した例は限られています。本研究室では食物繊維や難消化性オリゴ糖およびレジスタントスターチ等の難消化性成分と消化管粘膜との相互作用ついて、実験動物(ラット)を用いて研究を行っています。以下に示したのは現在行っている研究の一例です。

1.食物繊維摂取時の小腸内ムチン分泌促進作用
ムチンは粘液を構成する高分子の糖タンパク質であり、小腸・大腸においては杯細胞で合成・分泌されています。本研究では食物繊維摂取時の小腸内ムチン分泌促進作用について食物繊維の物理化学的性質である嵩と粘性の観点から解析をおこなっています。

2.発酵性繊維摂取時の大腸生理機能に及ぼす影響
食物繊維の多くは大腸において腸内細菌による発酵を受け、短鎖脂肪酸(酢酸、プロピオン酸、酪酸)や乳酸およびガスに変換されます。なかでも短鎖脂肪酸には多彩な生理作用が報告されています。また、食物繊維や難消化性オリゴ糖の一部にはプレバイオティック効果(腸に常在する有用菌を増殖させるか、あるいは有害な細菌の増殖を抑制することで宿主に有益な効果をもたらす)を示すものがあります。本研究では発酵性食物繊維摂取時の大腸生理機能に及ぼす影響について、生化学的、組織学的、免疫学的および分子生物学的手法を用いて解析を行っています。

3.食物繊維の腸管吸収と免疫調節機序
食物繊維は難消化性成分であり、そのほとんどは吸収されないと考えられています。一方で、βグルカンやペクチンといった幾つかの難消化性多糖類では、以前から経口摂取による免疫調節作用が知られています。腸上皮組織での多糖類の認識や応答に関する知見は乏しく、したがって、免疫調節作用機序についても未解明の部分が多く残されています。本研究では、腸上皮組織と食物繊維の相互作用という観点から食物繊維の免疫調節作用機序の解明を目指し、生化学、組織学、免疫学および分子生物学的手法を用いて解析を行っています。


これはラット回腸のBrdU-アルシアンブルー二重染色像です。BrdUは細胞内に存在せず、外部から投与されるとチミジンの代わりにDNAの合成に用いられるため,細胞増殖を観察するのに用いられます。ここでは青く染まった杯細胞にBrdUが取り込まれ細胞核が茶色く染まっている様子が観察されます。


小腸にはパイエル板と呼ばれるリンパ組織が多数分布しており,その内部には多くのリンパ球が存在しています。パイエル板では食事抗原や腸内細菌が取り込まれ,その情報が免疫担当細胞に伝達されます。上図はラット小腸のパイエル板で緑色に光っているのがTリンパ球,赤く光っているのがBリンパ球です。


上図はラット大腸粘膜の高鉄ジアミン-アルシアンブルー染色像です。ムチンの糖鎖の違いにより,青く染まっている酸性ムチンと,黒く染まっている強酸性ムチンに染め分かれます。

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